環境問題とシックハウス症候群

漠然と聞かれる環境問題。この機会に御一読いただければと思います。(資料はNPO法人シックハウス診断師協会発行物より抜粋)

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◆シックハウス症候群とは

住居内での室内空気汚染に由来する様々な健康障害を総称して、シックハウス症候群と呼びます。
シックハウス症候群のもっとも大きな原因は、化学物質を放散する建材・内装材などの使用による室内空気汚染です。様々な化学物質で汚染された室内空気環境により、居住者に頭痛や吐き気、目の痛み、めまい、平衝感覚の失調、呼吸不全、疲労などの様々な健康障害を引き起こします。
化学物質が体内に取り込まれることによって引き起こされる健康障害には、「アレルギー」「化学物質過敏症」などがありますが、その起因するところが主に住居内である場合は、シックハウス症候群に含めて総称されることもあります。
また、住居内でのダニ・カビの増加によるアレルギー症状も含まれます。

このように様々な複合的な要因があると考えられることや、病状が多様で、症状発生の仕組みをはじめ、未解明な部分も多いため、『シックハウス症候群』という呼称は便宜的に用いられている名称であり、まだ病気として医学的に定義された名称ではありません。そのため病院で治療を受けた際の診断書では「中枢神経機能障害」などとされる場合もあります。
また、室内空気汚染だけではなく、食品や医薬品などによる、化学物質の経口摂取量の増加なども関係しているとも言われています。
最近では、学校の室内空気汚染による健康障害として「シックスクール症候群」も問題化しています。

※現在の住環境の悪循環についてはこちら




◆シックハウス症候群の特徴

シックハウス症候群は原因も症状も多種多様で、ひとつの原因やひとつの症状、ある一面からの定義では正しく理解することはできません。

〔原因が多種多様、様々な複合要因が考えられる〕
内装材などの建築材料が主な原因と考えられているが、それだけではなく家具などの調度品や日常生活用品、暖房器具などから放散される空気汚染化学物質や、ダニ・カビなどの生物的要因、ホコリなどハウスダストやたばこの煙など、多くの要因が複合的に絡み合っている。

〔住まい方や生活習慣による影響〕
換気や掃除の方法や、その程度・頻度、冷暖房の使用法、喫煙の有無など、日頃の生活習慣なども大きく関係する。

〔個人差が大きい〕
同一環境で生活している人でも、強い症状を訴える人もいれば、全く症状の出ない人もいる。病状も人により多種多様で、同一住居での居住者が同様な症状をあらわすとは限らない。症状の有無や程度には個人差がある。

〔化学物質の放散量が一定しない〕
建築直後の住宅では、建材などから化学物質が多く放出される。その放散量は時間の経過とともに減少するが、建物の構造や施工方法、使用された建材などにより大きく異なる。また、同じ工法で同じ建材を使用していても、温度や湿度などの条件により異なる。

〔原因となる建物を離れると症状は和らぐ〕
症状が出ても、その症状を引き起こす要因から離れると症状が和らぐことが多いので、原因となる建物の外にいるときや、換気した直後などは症状が和らぐ。




◆原因

シックハウス症候群を引き越す要因には以下のようなものが挙げられます。

〔建材から揮発する化学物質〕
化学物質を多用した新建材の使用

〔家具・日常生活用品から揮発する化学物質〕
家具は建材などに比べて、室内空気環境についての配慮がされていないことが多い。防虫剤、化粧品、タバコ、ストーブなども化学物質発生源。

〔換気不足〕
計画換気の認識不足による換気不足。

〔ダニ・カビ〕
高湿度・結露などによるカビ・ダニの増加。

〔体質の変化〕
アレルギー体質が進行など。

現代社会はストレスが多いと言われていますが、引越しでの環境の変化に伴う心理的ストレスなどの心理的要因も、シックハウス症候群の原因のひとつではないかと考えられています。

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◆発生源と主な材料

シックハウス症候群の原因となる有害物質は、住宅建材だけに限らず日常生活の中のあらゆるところから発生しています。

・農薬/殺虫剤
殺虫剤、除菌剤、除草剤、シロアリ駆除剤、ゴキブリ駆除剤、蚊取り線香、防虫剤、抗菌剤

・住宅建材
合板、パーティクルボード(接着剤)、MDF、壁紙の接着剤、壁紙の可塑剤・安定剤、壁紙の原料、板や畳の防虫剤、化粧板(接着剤・原料)、断熱材、コーキング材、プラスティック配管(原料・可塑剤)、塗料(有機溶剤・原料)、澱粉粉(防カビ剤)、合成接着剤(有機溶剤・原料)、ペンキ、うすめ液、ワックス、ニス、防腐剤、難燃剤、難燃可塑剤

・家具/調度品
カーペット(接着剤・原料)、家具(接着剤・防虫剤・原料)、カーテン(難燃剤)

・暖房/厨房機器
開放型石油ストーブ、ガスレンジ(燃料・燃料生成物)、システムキッチン(原料・接着剤)

・日常生活用品
事務用品、接着剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、殺虫剤

・電化製品/事務機器
掃除機(防菌材・防虫剤)、コピー機(有機溶剤)

・自動車関連
燃料、排気ガス、内装材など

・食品/食品添加物
保存料、防腐剤、防カビ剤、殺菌剤、発色料、酸化防止剤、着色料、漂白剤、甘味料、調味料、食肉類に含まれる抗生物質、重金属(カドミウム、水銀、鉛)、日持ち向上剤

・大気汚染
窒素酸化物、硫黄酸化物、炭化水素、硫化水素、アスベスト、ダイオキシン、オキシダント

・水道水
農薬、合成洗剤、トリハロメタン、四塩化炭素、重金属、ジベンゾフラン

・洗剤類
合成界面活性剤、酸化防止剤、保存料、金属封鎖剤、柔軟剤、漂白剤、カビ取り剤、殺菌剤、防腐剤

・食器類
プラスティック類(可塑剤、安定剤、酸化防止剤)、メラミン食器

・衣類
繊維加工剤、防虫剤、脱臭剤、ドライクリーニング溶剤、抗菌グッズ

・医薬品
総合感冒薬(ピリン系、アスピリン、アセトアミノフェンなど)、鼻炎・咳止め用内服薬、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、炎症抑制剤

・その他
香水、化粧品、化粧品添加物、ヘアスプレー、パーマ液、染毛剤、トイレボール、芳香剤、消臭剤、タバコの排煙、掃除機のゴミパックの抗菌加工




◆症状
※左図をクリックで拡大表示されます。

シックハウス症候群の症状は個人差が大きく、非常に多岐にわたります。また、不定愁訴と言われるような、本人にしか自覚できない症状が多く、自律神経失調症や更年期障害、風邪、花粉症、精神疾患などと間違われてしまうこともよくあります。

・精神・神経障害
易疲労性、なんとなく疲れを感じる、不眠などの睡眠障害、頭痛、倦怠感、興奮、めまい、眠気、集中力・記憶力の低下、頭痛、傾眠、不安、うつ、めまい、行動異常、被刺激性亢進

・末梢神経障害
関節痛、筋肉痛

・気道障害
咳がでる、風邪をひきやすい、鼻や喉の乾燥感、鼻水、嗅覚過敏、咽頭痛、鼻の刺激や痛み、喉の刺激や痛み、鼻閉、喘鳴、呼吸困難

・消化器障害
下痢、便秘

・眼科的障害
目に刺激感がありチカチカする、乾燥感、涙が流れる、角膜乾燥、充血

・内耳障害
めまい、ふらつき、耳鳴り

・循環器障害
不整脈、心悸亢進

・皮膚障害
アトピー性皮膚炎、じんましん、皮膚が乾燥、皮膚が赤くなる、掻痒感、皮疹